第4回ときがわ自然塾「藻谷浩介さん講演会」を開催しました。

ときがわカンパニー代表の関根です。

2021年5月15日(土)16時~18時、「里山資本主義」で有名な藻谷浩介さんの講演会を、トカイナカハウス神山さんとの共催で、開催しました。

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講演会が始まる前に、藻谷さんとご挨拶し、風間さんとの共著『地域でしごと』もお渡ししました。

「こういう実践者の方々がいるんですよね~」

とても気さくな感じの方です。

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神山さんからのご紹介後、講演会がスタートします。(私は、オンラインのほうを担当しました)

私の理解の範囲で、特に印象に残った言葉を記録しておきます。

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「事実認識、フェイク発見の技法 ~コロナ禍に関する情報反乱を題材に~」

・嘘を堂々と書く新聞はない。複数の人の目が通っていると、ウソは付きづらい。

・日本政府には力がない。役人が江戸幕府化している。担当がいないからできない。

・事実認識にも練習が必要。

・日本は、世界の中で、感染対策○、経済成長△

●事実認識、フェイク発見の技法①

・「あなたの言う通りだとしましょう。その通りなら、こうなるはず」で検証

 もし~なのであれば、~になるはず。だが、現実には~になってない。ということは、~ではないのだろう。

・一部だけでなく、なるべく一通りを確認。

・感染拡大の要因は、外国人観光客ではななかった。

・「こういう考え方もあるよね」と考えることが、フェイクニュースの源泉。
・考えの前に、事実がある。

・死んだ人の数はごまかしにくい。感染者数は、検査数によって変わる。

・コロナ受入状態 2%~5%、これを、10%にあげるためには、国からの指導が必要(県知事から、県内病院へ要請し、病床確保ができている地域もある)

・ウィルスがいなかった地域(例:モンゴル)で、感染爆発している。

 

●事実認識・フェイク発見の技法②

・正誤の判断基準=周囲の他人がどう言っているか

 共同主観(皆が信じる世の空気) ⇔ 個人主観(特定個人のものの見方)

・「よくわからない」ことを認めないと、フェイクにはまる。

・わからないことは、判断保留する。
  わからないことを、わかると断定しない
  わかることを、わからないと断定しない

・共同主観から、覚悟を決めて逃げる
  皆がそう言っているを基準にしない
  共同主観の強い人との議論は逃げる

・世間の声と自分の声がせめぎ合う。精神分裂状態になる。

・数字である程度蓋然性の高いことしか言わない

・消費は、1989年(バブル当時)が低かった。株価が上下しようと、消費は変わらない。

・中国は、個人から土地を取り上げた。畑が無い。

・年寄りが、トカイナカでいかに楽しく生きられるか。日本は、世界の実験場となっている。

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私自身は、今後

・「もし~ならば、~となるはず」を考える。

・共同主観の強い場(TV、ネットでの特定発信者)から距離を置く。

ようにできたらと思います。

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藻谷さん、参加者の皆さん、神山さん、ありがとうございました!

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翌朝(16日)藻谷さんから、下記メールを頂戴しました。(許可を得て転載)

●藻谷さんからのメール

昨日は長時間たいへんにありがとうございました。

神山さんが、ときがわで見事な仲間を作っておられたのが、何より印象的でありかつ嬉しいことでした。

私は埼玉西部、特に八高線エリアへのリスペクトの高い人間なのですが、都心の企業で能力を発揮させてもらえずに飼い殺しされるリスクを避け、移り住んで(戻ってきて)面白いことをしている人が多い地域だという認識を、改めて持ちました。

共同主観の説明は、生煮えになってしまいました。人は生来、正誤を判断する基準として、理屈や事実確認ではなく、「周囲の他人がそう言っているかいないか」(仲間内の共同主観になっているかどうか)を使うものです。

脳の判断のOSが、そうなっているのです(べブライ大学ユアル・ハラリ教授の世界的ベストセラー「サピエンス全史」上巻参照)。どんなに変な話でもフェイクでも、仲間と思っている人たちがそれを話しているのを聞いているうちに、信じてしまうというのが人間の脳です。

理屈ではおかしいと思うような話でも、統合失調症の幻聴のように、脳内に聞こえてくる共同主観の声に引っ張られてしまうのです。カルトも、オレオレ詐欺も、いろんな会議のなあなあの議決も、全部同じ仕組みを使っています。

アリストテレスは「弁論術」で、「人はロゴス(理論、事実)では説得されないものであり、いつもパトス(感情)に支配される。それを乗り越えて説得するにはエートスを使うしかない」と言っているのですが、このエートスというのは「良く理屈はわからんし、感情的にも気に食わんが、あの人(たち)がそう言っているなら信じよう」という考え方です。

アリストテレスは、「人間は理屈では動かず、信じる他者の意見に沿ってしか動かない。つまり共同主観を形成してうまく使わない限り、人は信じてくれない」と言っていたわけです。

2千年経っても人類は進歩していないばかりか、SNSというエートスにとって万能の武器が登場したため、トランプを信じる、安倍晋三を信じるといった、理屈ではなくあの人を信じるといった点(エートス)だけを共有する人が、大きな力を持つようになりました。

ちなみにそういうのの先駆者にして最悪の例が、ラジオを使ってエートスの覇者となったヒトラーでした。皆さん、エートスが好きだと思いますが、エートスはダメなのです。ロゴスの力を練習して鍛えないと、信用できそうな人の言っているフェイクにとらわれてしまうのです。

とはいってもエートスは脳の構造に根差すもので、強力です。誰でも洗脳されますし、騙されます。

対処策は、共同主観を持つ共同体から逃げること。話半分に聞いて全身では加わらないことです。中に没入すると、必ず共同主観に染まります。その上で、わからないことをわかったことにせず、強い意志で証拠が出るまで判断保留とすることで、冷静な判断に近づくことができます。

資料はご自由にお使いください。今後ともどうかよろしくお願いいたします。

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藻谷さん、ありがとうございました! 

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