前編 「なぜ10年続いた起業支援 業務委託が終了したのか?」

ときがわカンパニー代表の関根です。

2026年3月19日(木)11時、ときがわ町役場で、町からの起業支援「業務委託」終了に関するミーティングを行いました。

3月11日に、連絡を頂き、今回のミーティングとなりました。
当初は、「何故!?こんなに急に!?」というのが、率直な思いです。

ただ、実際にお話を伺い、背景や理由を知り、納得しました。結論から言えば、今回の委託終了は、起業支援の否定ではなく、行政委託としての役割が一区切りを迎えたためでした。

平成29年(2017年)から、令和8年(2026年)の今まで、10年に渡り、お付き合い頂けたことを感謝します。

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その反面、議会でどんなやり取りが行われ、今回の決定に至ったのか、その流れは理解したいと思いました。

そこで、下記のときがわ町議会 会議録(平成29年~令和7年)を、AI(Genspark、Perplexity、ChatGPT)に読み込ませ、

https://www.town.tokigawa.lg.jp/div/203010/htm/gijiroku/h29.html

「起業支援」「ioffice」「起業相談」「比企起業塾」等のキーワードで抽出しました。

-抽出条件(キーワードだけでなく、除外条件も提示)
-判定の扱い(“起業支援”が単語として出ても無関係なものを除外した)
-再現性(使ったURLの提示)

その結果、232件がヒットし、その原文を、いったんは私の方で読み込み、本当に「起業支援」等の話題かをチェックしました。(目がクラクラしました(笑))

その上で、再度3つのAIにかけ、トリプルチェックをしながら、時系列で論点を整理しました。その結果が、下記です。(あくまで、人間による目視とAIによる整理の為、抜け漏れの可能性あり)

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ときがわ町の起業支援 これまでの流れ

●H29(2017)「つくる」:ioffice開始(起点)

・役場敷地内に起業支援施設 ioffice(アイ・オフィス)を開設。運営をときがわカンパニーが担い、起業セミナー等で若者の起業を後押し→定住促進につなげたい、という“政策の出発点”。

・ねらいは「企業誘致だけでなく、住民が稼ぐ力を増やす」。相談が入り、実際に起業した例も出た、という説明がある。

●H30(2018)「数字で見せる」:相談実績・起業到達が語られる

・iofficeの活動について、議会で相談回数・相談人数・起業に至った人数が示される(例:86回/延べ142名/起業5件)。一方で「起業しても継続が難しい」課題も同時に語られる。

・「起業支援+企業誘致」を雇用創出の柱として説明(町の方針として定着)。

●R02(2020)「問い直し」:透明性と効果検証が求められる

・監査・議会の場で、運営の透明性や成果の出し方について、効果検証と見直しを求める声が出る。

・その周辺論点として、相談料(例:1時間1,100円)の扱いが「支援の趣旨に合うのか」という疑問が出る。

●R06–R07(2024–2025)「成果の定義を整理+KPI」:何を成果とするかを“分けて”示す

・R06(2024):KPIが「相談の量」だけでなく、「起業に至ったか/町内で起業したか」まで含めて説明される(例:延べ229件の相談、女性88人。比企起業大学・大学院の卒業生60人→起業到達46人、町内起業7人など)。

・R07(2025):住民が混同しやすい点として、次が整理される
-町が委託している「起業相談(委託)」(→行政のKPIで追う対象)
-施設入居者側の自主活動(iofficeでの活動)(→「関係人口づくり」の効果として評価)
-さらに、委託相談の単年度KPI例として昨年度18件が示される。

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これまでの流れを、図にまとめると、こうなります。

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こうやって、議事録を読み返してみると、

・執行部(町役場)の皆さんが、町の未来のために、私達を応援してくれていたこと
・議員さん達は、誠実に、町の施策や税金の使われ方を、検証しようとしていること
・多くの方々に、助けてもらっていること

を感じました。

町から10年にわたり業務委託を受けながら、町や議会が期待する形で成果を十分に示し切れなかったのは、私の力不足です。

同時に、起業支援というもの自体が、短期で数字に表れにくく、行政の施策として評価することの難しさもあったのだと思います。

ときがわ町起業支援施設での「起業相談」業務委託契約は、26年3月末で終了となります。これまでありがとうございました。

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今後は、

・業務委託契約は終了(町から入るお金は無し)
・役場前の「ときがわ町起業支援施設」は、今後も家賃を弊社が支払い、利用させて頂く(町に入れるお金は有り)

ということで、まさに、民間企業として、自由にやらせてもらいます。

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では、業務委託が終わるのに、なぜ私は起業支援を続けるのか。

それは、行政の事業としては一区切りでも、私自身の中では、この仕事は終わっていないからです。

まずは、これまでの「ときがわ町起業支援施設(ioffice)」での「起業相談」について総括し、これから、そして「そもそも何故、起業支援をしているのか?」について、後編でお話します。

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1.これまで

・起業支援施設利用者 累計4743名(2017年5月~2025年12月)

ときがわ町民の利用は、1376名(29%)であり、利用者の多く(7割)は町外からでした。

・起業相談数 累計246名(2017年5月~2025年12月)

ときがわ町民の利用は、73名で30%。施設利用者の割合とほぼ同じです。残り7割は、町外からの相談者でした。

議会で繰り返し問われていたのは、「起業支援は本当に町民のためになっているのか?」という点でした。議会でも指摘された通り、ときがわ町民の起業相談は、全体の3割程度であったというのが、実情でした。

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では、そもそも、ときがわ町民で「起業相談に来る人」は、どのくらいいそうなのか?
あくまで簡易推計ではありますが、ちょっと計算してみましょう。

約1万人のときがわ町民の内、生産年齢人口(15〜64歳)は約5,100人(令和7年4月1日現在の住民基本台帳ベース)です。

同じ年齢層で直近の国勢調査(2020年)を見ると、すでに自営業主・家族従業者・役員として働いている方がおよそ1,138人います(※)。

※2020年国勢調査ベース。自営業主+家族従業者839人+役員299人=1,138人(概算)

残りの約4,000人の中で、実際に労働に参加している方が6割とすると約2,400人。

この中で新たに起業を目指す候補者は、開業率(約5%)と自営業率(約10%)を当てはめると、約120〜240人と推計されます。

起業相談に来て下さったときがわ町民の方73名(延べ人数ではありますが)は、この約120~240人の方々かもしれません。

仮に、120~240の間をとって、180人だとすれば、73名ということは、約40%です。この推計が正しければ、ときがわ町の起業候補者のうち約40%が、実際に相談に来てくれたことになります。

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また、2017年からスタートした「比企起業大学・大学院」(当時は比企起業塾)の参加者には、ときがわ町民の方々(5名)や、ときがわ町に移住して下さった方々(2名)ときがわ町を拠点に事業をして下さっている方々(9名)もいます(26年3月時点)

ときがわ町民から、起業する人を増やすのは理想だと思いますが、起業した人が、ときがわ町ら辺(人がどこに住むかは、その人の自由なので)に住んでもらえたら良いのではと思っています。

26年3月現在、比企起業大学では、卒業生89名中、71名(約81%)が、事業を継続されています(会社員をしながらの副業も含む)。

独立起業は始めるのは簡単なのですが、継続するのが大変なので、これは誇れる実績の一つだと思っています。比企起業大学 学長の風間さん、大学院講師の林さん、栗原さん、そして先輩として活躍されている比企起業大学アラムナイ(卒業生)の皆さんのお陰です。

その他の比企起業大学の実績については、24年4月に発行した「比企起業大学IRレポート」の通りです。

アンケート結果
https://hiki-kigyo-college.com/2024/05/05/ir-questionnair_240505/

分析結果
https://hiki-kigyo-college.com/2024/06/26/ir-analysis/

比企起業大学 学長で、共に起業支援を行っている風間さんからは、下記コメントをもらいました。

町外の方が多いということに関して、町とときがわカンパニーが連携して起業に取り組み始めたことで、「起業」に興味のある方がわざわざ町外からときがわ町を訪れてくれる方が多くいたことは、非常に大きな意味を持つと思っています。

関係人口の文脈かもしれませんが、町民の人口にとどまらない点で、やはりここは大きな成果といえるのではないかと思うので、強調してもいいのではないかと思いました。

こうやってふり返ると、短期で見えやすい成果と、時間をかけて育つ成果の両方をどう示すかは、私自身にとっても大きな課題でした。

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2.これから

これからも、下記手段を通じて、「地域でミニ起業」されたい方々の支援を続けていきます。

0)メルマガ「田舎で!ミニ起業」の発行

https://hiki-kigyo-college.com/2023/01/25/mail-magazine/

1)マナビバ!本屋ときがわ町v.3
(お越し頂くだけなら無料。まずは、比企ら辺で起業した人たちの雰囲気を知ってもらう場)

今後の「本屋ときがわ町」開催予定

2)起業相談 1時間6,600円(比企起業大学アラムナイのみ、3,300円)

こちらは、26年4月1日からの値上げ金額となります。これまでは町の委託料があったからこそ、1時間1,100円という「行政価格」で対応していました。今後は、民間として継続的に支援を提供していくため、サービス内容と責任に応じた料金体系に移行します。

>・その周辺論点として、相談料(例:1時間1,100円)の扱いが「支援の趣旨に合うのか」という疑問が出る。

議会からは、上記疑問を出してもらっています。

そのような中で、なぜ「無料」相談にしなかったのか。

それは、無料でないと来ないような方なら、そもそも起業という険しい道は歩めないと考えているからです。

実は、17年ほど前に苦い経験がありました。

「起業したけど上手くいかなかった。どうしてくれるんだ」

延々と他責な愚痴を聞かされたことがあります。

当時は私も若かったですが、その時に痛感しました。自分の人生に投資できない、他責な方は、起業してもやはり上手くいかない。これは冷徹ですが、2社を経営し(1社は22年目、もう1社は11年目)多くの起業される方々を見てきての、現実です。

無料相談は、一見親切に見えて、実は本人のためになりません。「無料だから」と起業相談に来る方は、きっと有料で学ぶ(例:比企起業大学)ことは無いでしょうから、起業の原理原則(顧客づくり・商品づくり・現金のこし)について学ばないまま、起業を始めてしまうことになります。

顧客が作れず、売上が上がらず、お金が入ってこない。そうなった時「無料で相談できるから」と、仮に何度も相談に来ても、改善はしないでしょう。本人の依存心が高まるだけです。

有料であっても相談に来られるかどうか。それは、その方が本気で起業を考えているか、そして成功できるかを見極める「試金石」なのです。

起業は、始めることよりも、続けることの方がずっと難しく、継続するためには、学び続けること、試すこと、失敗から立て直すことが必要です。そのためには、お金も時間も、自分で投資していく姿勢が欠かせません。

だから私は、相談件数を増やすために無料にするのではなく、本気で起業に向き合う人と出会うために、有料という形を選んできましたし、これからもそうします。

起業相談用ページ:
https://tokigawa-company.com/sekine-ioffice-1903/

3)比企起業大学 26春~ 約5か月間 66,000円

https://hiki-kigyo-college.com/

4)比企起業大学大学院 第10期~ 約5か月間 132,000円

「地域でミニ起業」に興味がある方は、まずは、0)メルマガ「田舎で!ミニ起業」に登録頂いた上で、1)本屋にお越し下さい。

活動の様子は、月1回「ときがわカンパニー通信」で、ご報告します。

https://tokigawa-company.com/project/iroiro/tc-tsushin/

ここまでが、業務委託終了に至るまでの流れと、これからの起業支援の内容です。

では、業務委託が終わっても、起業支援を続ける理由は何か。それは、数字では測れない『ある確信』があるからです。後編でお話しします。

投稿者プロフィール

関根 雅泰

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