ときがわ方式の効果

(上の写真は、明覚小学校教室。役場HPから転載)

ウェブで、本間正人先生(NPO学習学協会代表理事、京都造形藝術大学教授)
から、下記コメントを頂戴しました。

>「木のぬくもり」がもたらす情緒安定効果とか、
>物を大切にする心を育むエネルギーとか、
>大きいと思うなぁ。

https://www.facebook.com/tokigawaclub/posts/774286456038717

ときがわ町では、木の学校は当たり前になっていますが、
改めて、木の学校が子供たちにどのような効果をもたらしているのか、
資料から抜粋します。

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・今から30年ほど前に静岡大学が行った有名なマウスの実験があります。
 木、鉄、コンクリートの箱に入れたマウスの生存率を調べるもので、
 木の箱は問題なく生存したにも関わらず、他の二つの箱は約2カ月しか
 生存できませんでした。

 死亡の理由はストレスで、そのストレスは生殖器に強く影響します。

 こうした状況を踏まえ、子供たちのために学校の内装を木質化して
 健康にも良い学習環境を作ろうと考えたことが、町長(当時は村)を
 目指した一つのきっかけでした。

 (文教施設 2015年夏号 関口町長談 文教施設 2015年夏号 目次のみ )

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・「耐震改修+内装木質化」のときがわ方式は、すぐに効果を発揮しました。

 子どもたちや先生に歓迎されたのはもちろんのこと、冬場に風邪を引く子どもが
 激減したのです。私はこれはシックハウス症候群の解消にも効果があるのでは
 ないか。ぜひ全国の学校でも実施してもらいたい。

 そのためには、実際に学校内の温度や湿度を継続して測定し、正確な統計をとって
 おいた方が良いと考え、長野県にコンタクトをとって共同研究することとしました。
 当時の長野県知事は田中康夫さんで、彼の発信力に期待してのことです。

 この研究のメンバーには、元東京大学教授で現秋田県立大学教授、
 においの専門家の谷田貝光克さん等の方々が、平成16年から18年にかけて
 研究に参加してくださいました。

 その結果を、茨城にある独立行政法人森林総合研究所の当時の室長、
 大平辰朗さんが中心となって全部まとめてくれました。

 研究の成果は、第54回日本木材学会大会で発表されて一定の評価を得たのですが、
 研究が農林関係の分野だけで完結してしまったこともあって、残念ながらそれ以上の
 発展を見ることはありませんでした。

 木の専門家である農林関係に加えて、教育の現場に携わる教育委員会や
 文部科学省、実査に建物を設計・建築する建築家の三者がコラボレートすることの
 必要性を痛感いたしました。

 (木の学校づくり先進地からの提案 木の学校づくり先進地からの提案 )

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・木のよさ

 A.健康面での効果

 1)熱を伝えにくく、暖かい手触りを与える
 2)室内の温度を調節する
 3)音を適度に吸収し、音をまろやかにする
 4)衝撃を吸収する
 5)光を適度に散乱し、目に自然な感じを与える
 6)木の香りが気持ちを落ち着かせる
 7)ダニやカビの繁殖を抑制する

 B.教育面での効果

 1)快適な教育環境の創出(夏場の湿度が低下、冬場は均等に温まる)
 2)学級閉鎖の減少
  (RC造:鉄筋コンクリート造では、約20%に対して、木造、木質校舎は約10%)
 3)情緒の安定
  (不安傾向、抑うつ性、神経質の項目について、木造とRC造では有意差あり)
 4)ときがわ町立玉川小学校での事例
  (インフルエンザの減少、先生・生徒の咳の減少、教室内の寒さの緩和あり。
   室内が快適になったという結果。木質の床はコンクリートの床と比較すると、
   足が冷えず、眠気とだるさ、注意集中の困難を訴える割合が低いという結果も。
   平成16年~18年度に行われた埼玉県、長野県、ときがわ町の共同研究の結果)
 
 C.環境面での効果
 
 1)再生可能な資源である
 2)地球温暖化を防止する
 3)製造時の消費エネルギー、炭素排出量が低い

 (木造公共建築物整備の手引き p13-17 木造公共建築物整備の手引き )

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・木の魅力

 A. 人の感覚に添う木の特性

 (1)視覚特性
  -RC(鉄筋コンクリート)造と、木造校舎を比較すると、
    木造校舎に生活する子供のほうが、目の疲れの訴えが少ない。
  -木目のもつ「1/fゆらぎ」に、人は心地よさを覚える。
 
 (2)触覚特性
  -血圧や脳波などの整理反応からも、実際に木に触れると人は
    安らぎを得ることが明らかになっている。
  -木製の机を使っている学校の子供と、スチール製の机を使っている
    学校の子供の様子を比較すると、木製のほうが「注意集中の困難さ」
    や「眠気とだるさ」を訴える子が少ない。
  -木材床は、歩行時の衝撃を適度に吸収すると共に、転倒しても
    大事に至らない安全性がある。
  -木材床よりも、コンクリート床で過ごした場合のほうが、「眠気とだるさ」
   「注意集中の困難さ」を訴える割合が高くなっている。

 (3)聴覚特性
  -木質空間では、耳障りな残響音が少ない(コンクリートの約1/10)

 (4)嗅覚特性
  -木の香りは気持ちを静め、気分を爽快にさせる傾向がある。

 B. 健康空間を形成する木の特性

 (1)生体調節
  -鉄筋コンクリート造校舎の子供たちは、木造校舎に比して、
    眠気やだるさを覚え、注意集中の困難な傾向がより多く見られている。
  -鉄筋コンクリート造校舎に勤務する教師のほうが、精神的な蓄積的疲労
    を訴えると共に、就労意欲の減退を覚える割合が多い。

 (2)室内気候
  -木造校舎あるいは内装を木で施した鉄筋コンクリート造校舎では、
    冬期のインフルエンザによる学級閉鎖率が低く、インフルエンザの蔓延が
    抑制させる傾向が見られた。

 C. まとめ

  -各種の機能がバランスよく発揮される必要のある居住環境形成材料として
    木材に比肩し得るものは、いまだ開発されていないといえる。
  -従来、校舎建築に使われる材料は、燃えにくく壊れにくいといった耐久性に
    関する性能が強調される傾向があった。しかし、そのような観点だけで材料を
    不注意に用いると、人が過ごすには不適切な環境を生み出す危険性を
    はらんでいる。
  -物理的環境は、社会的環境形成の基盤にもなるので、心豊かな人間形成
    の場となる校舎、教室には、教育、学習活動の視点と共に、居住性の
    視点からも注意が注がれる必要がある。

 (早わかり木の学校 p10-17 早わかり木の学校 )

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学校の先生方から、こんな話を聞いたことがあります。

「ときがわ町に赴任が決まると、他の先生方から羨ましがられるんですよ。
 “あそこは、子供たちが落ち着いていていいよね~”、とか
 “校舎で足冷えが少ないみたいね”とか。」

何気なく聞いていましたが、もしかすると、内装木質化の効果なのかもしれませんね。

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