ときがわカンパニー代表の関根です。
ときがわ町含む全国の林業、製材業、建築業等に、大きな影響を及ぼすであろう「森林環境譲与税(仮称)」が、2019年度からスタートします。
現時点での私の理解の範囲で、森林環境税に関する情報をまとめておきます。(間違って理解している点がありましたらご指摘ください。)
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「森林環境税(仮称)」が、2024年度から、一人当たり1,000円、住民税に上乗せして、徴収されます。平成30年度税制改正大綱で決まりました。
「森林環境税」は、私達が年間1,000円を払う「森林環境税」と、それを森林の整備等に使う「森林環境譲与税」という2つの税から構成されています。(参考:林野庁 2018「森林環境税(仮称)と森林環境譲与税(仮称)の創設」)
2014年から個人住民税に上乗せされてきた1,000円の「復興特別税」の徴収が終了する2024年に、それに代わって「森林環境税」が上乗せされます。つまり10年前から払っている金額と変わらないので、増税感は少ないでしょう。
現在、個人住民税を払っている約6,000万人全てが対象となるので、年間で約600億円の税収が見込まれています。この600億円を、森林の整備等に使うのが「森林環境譲与税」です。「森林環境譲与税」は、2019年度から、課税に先行して施行されます。
林野庁の沖長官は、インタビューの中で「森林環境譲与税」の使い道として、以下のように述べています。
毎年、森林整備に約1200億円を補助していますが、それでも年500~600億円足りず、補正予算で数百億円を追加している状況です。新税の税収600億円で、毎年の不足分を補える計算です。
補助金は今まで通り、収支トントンとなる森林の整備に使い、新税は採算ベースにのらない森林の手入れから使います。新税の創設で、補助金とは違う方法で森林整備ができる道が開けました。安定的に整備ができる面積が増えたと言えます。
(参考:「日本には数多くの放置された森が…「森林環境税」で整備へ一歩 林野庁・沖修司長官インタビュー」2018年01月13日)
上記で、沖長官が述べているような間伐や路網といった森林整備以外にも、
・森林整備を促進する為の人材育成、担い手の確保
・木材利用の促進や普及啓発
に、森林環境譲与税は使われることになるそうです。
(参考:「森林環境税(仮称)と森林環境譲与税(仮称)の創設」)
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では、何故、森林環境税が創設されたのでしょうか?
・温室効果ガス排出削減目標の達成
・災害の防止
・市町村が管理する「新たな森林管理システム」の創設
が大きな目的だそうです。(参考:「森林環境税(仮称)と森林環境譲与税(仮称)の創設」)
日本には、待機児童や高齢者福祉など他にも財源が足らない領域はたくさんあります。それらより優先してまで、どうして森林環境税を創設するのでしょうか。結論から言えば、急務だからです。森林の荒廃は、国民の生活に多くの悪影響を及ぼし、その損失額は計り知れません。
(参考:「森林環境税の創設により住民税が1,000円アップ予定!」2017.12.08)
また、市町村に、森林整備の役割を新たに担ってもらいたいという狙いもあるようです。
これまで、林業関係の行政は都道府県が中心でしたが、法律を改正して、市町村に新たな役割を定めることで対策に乗り出すことにしています。そのための財源として浮上したのが森林環境税です。
(参考:「“森林環境税”導入をどう考える」(視点・論点)2017年11月24日 (金)関西学院大学 教授 小西砂千夫)
新税を使った森林整備は、市町村からの発注事業です。市町村が考えることですが、地域に意欲と能力がある林業経営者を育てるきっかけになると期待しています。
(参考:「日本には数多くの放置された森が…「森林環境税」で整備へ一歩 林野庁・沖修司長官インタビュー」2018年01月13日)
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このように「森林環境税」と、これを森林整備等に使う「森林環境譲与税」は、荒廃した森林の再生という観点で望ましいのですが、その一方、大きく3つの批判にさらされています。
1.二重課税
2.使途
3.不公平感
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1.二重課税
平成15年度に高知県が森林環境税を導入したことをきっかけに、全国37の都道府県と1政令市(横浜市)で導入されています。それらの県や市に住む方々にとっては、既に払っている森林環境税にプラスして、今回の森林環境税が上乗せされてしまうという「二重課税」になる恐れがあります。(参考:「森林環境税とは?2024年度から住民税に上乗せ 2017.12.20」)
この問題に対して政府は「新たな森林管理システムの下で、市町村が整備に携わるための財源に充てられるため、府県の超過課税にとって代わるものではない」と報告しており、既にある森林環境税とはすみ分けるようです。(参考:「森林環境税の創設により住民税が1,000円アップ予定!2017.12.08」)
また、もともと森林環境税を実施している自治体の議員は、全国森林環境税創設促進連盟というものを作っていて、全国レベルでの森林環境税の創設を求めてきたため、それがかなったのなら、自治体による森林環境税の継続徴収は無いのではという意見もあります。(参考:「全国森林環境税を創設?」2013年12月04日 田中淳夫氏)
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2.使途
森林環境税は、使途が定められた目的税になります。環境ジャーナリストの竹内敬二氏は、次のように述べています。(参考:「森林環境税 新設へ、放置森林は生き返るのか/今どき目的税を新設? 既存税とのダブリ批判も 新税を設ければ長年の問題が解決するのだろうか。」2018年01月05日)
一般的には目的税で特別財源ができると、目的が達成されても税は存続し、結果的に無駄遣いが多くなる。日本の危機的な財政状況を考えると、本当に必要なものならば、他の支出を絞って財源をつくるのが筋だ。
更に、竹内氏は、長野県で2008年に導入された「森林づくり県民税」の教訓を基に、徴収した税金の使い道に対して懸念を示しています。
「森林づくり県民税」が使いきれず、どんどんたまってきているからだ。所有者や境界が不明の森林が多く、思うように間伐が進まないのだという。
民間税制調査会の共同代表で、青山学院大学の三木義一学長は、次のような指摘をしています。
「環境保全という誰もが反対しにくい建前で、必要ない税が徴収され続けていくリスクが高い」
(参考:「住民税に1000円上乗せする「森林環境税」、わざわざ新設する意味はあるのか?」2018.2.13)
国民から徴収された年間約600億円の「森林環境税」が、本当に、きちんと「森林整備」に使われるのかという批判です。
これに対して、林野庁は「インターネットの利用等により使途を公表する」ことで、国民に対する説明責任を果たそうとしているようです。
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3.不公平感
森林環境税は、森林が無い都市住民にとって、不公平感を与えるものと言う批判があります。森林ジャーナリストの田中淳夫氏は、次のように述べています。
この税金。ようは住民の頭数で金を集めて、森林に使うというわけだが、そのため矛盾が生じる。森林面積が広い自治体は、概して人口が少ないこと。逆に都市部には森林があまりないから、納めた税金は納めた住民にはあまり還元されない。
実際、森林面積の多い県は、たいした金額が集まらない。2~3億円程度である。一方で大都市を抱える自治体(たとえば神戸市のある兵庫県など)では、その10倍もの額が徴収され、使い道に困るほどだ。また同じ県内でも、多くが都市部の住民が払った税なのに、都市には使われないから、不公平感がある。
(参考:「全国森林環境税を創設?」2013年12月04日)
いずれにしろ住民税に上乗せされるのだから人口が集中している都市部ほど税収額は多くなるが、配分は林業関係の数値が基準だから少なくなる。不公平感は拭えない。
(参考:「森林環境税の虚実~環境より林業振興?「森林バンク」構想は機能するのか」2018.2.8)
日経新聞も次のような懸念を示しています。
森林環境税は個人住民税に上乗せして徴収する方針だ。直接的な恩恵を感じづらい都市住民の理解を得られるだろうか。
(参考:「森林環境税を導入する前に」2017/11/18 20:54 日経新聞)
森林が少ない都市住民と、森林が多い地方住民の間で、不公平感が生まれる恐れがあるということです。
逆に森林面積が大きい自治体の議員さん(竹下修平氏)は、林野庁での説明を受けた上で、次のように述べています。
改めて両制度が熟慮を重ねて非常に作り込まれてきたものだと知ることができました。そして、森林環境譲与税(仮称)については多くの金額の使途が地方自治体に任されるということなので如何に積極的かつ有効に活用していくかが大切になると思われます。森林面積が非常に高い新城市だからこそ、最大限の有効活用を塾考していきたいです!
(参考:「【林野庁】森林環境税(仮称)及び新たな森林管理システムについて」2018年3月31日 愛知県新城市議会議員 竹下修平氏)
都市住民の不公平感に関して、林野庁の沖長官は、インタビューに答えて、次のように述べています。
-(インタビュアー)新税について森林がない都市部の住民が負担するのは不公平、すでに37府県が独自の森林整備の税があって二重課税という声も聞かれます。
(沖長官)ようやく課題の整理が見えてきたところです。国産材の利用に一定の支援をしようとなりました。林業の川上から川下も対象とした、まとまり方になりました。東京都港区や川崎市など木材利用を進めている先進事例があります。新税を都市部に木造施設が増えるきっかけにもしたいです。
(参考:「日本には数多くの放置された森が…「森林環境税」で整備へ一歩 林野庁・沖修司長官インタビュー」2018年01月13日)
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「新税を、都市部に木造施設が増えるきっかけに」
では、どのような「木造施設」が、都市部に増えると、都市住民の不公平感が減る可能性につながるのでしょうか?
ヒントになるのが、平成22年に施行された「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」略して「木促法」です。
「公共建築物等」つまり「学校」の建物に、木が使われることで、「森林環境譲与税」が都市住民の子どもたちの為に使われ、森林の恩恵を身体で感じる機会になっていくのです。
ただ、学校すべてを新築木造にすると莫大な金額がかかります。例えば、文部科学省は、次のような試算をしています。
文科省は今後30年で公立小中学校の非木造校舎の老朽化対策にかかる費用を試算。築50年の校舎を全て建て替えた場合は38兆円、8割は改修で寿命を75年に延ばし、残る2割を建て替えた場合は30兆円と推計している。
(参考:「公立小中の老朽化対策、建て替えより改修へ 文科省」日経新聞 2014/2/11)
この「改修」で、力を発揮するのが「ときがわ方式」です。
学校校舎や体育館の耐震補強、屋上防水、外壁塗装、そして「内装木質化」を行う事で、新築そっくりな外見に、木の香り漂う屋内環境を作ることができるです。(参考:ときがわ方式の効果)
しかも、建て替え・新築の約1/5のコストで、実現可能です。(参考:ときがわ方式の金銭的コストとメンテナンス)
この「ときがわ方式」を、埼玉県比企郡ときがわ町および近隣の市町村で推進してきたのが、ときがわ町初代町長の関口定男氏です。
関口氏は、現在、ときがわカンパニーのグループ会社(株)ラーンウェルの会長職を務められ、「ときがわ方式」の更なる推進を図っています。
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「森林環境譲与税」の使い道として、都市部の小中学校の「内装木質化」の可能性をご検討ください。
お問い合わせは、こちらのフォームからお願いします。(担当は「ときがわ方式」拡販事業部長・ラーンフォレストの林博之です。)
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●最近の「森林環境税」関連の記事:
2019年5月4日(土)埼玉新聞 2面「森林税収配分 大都市優遇 林業地域で目減りの恐れ」
森林保全に役立ててもらうため、総務省が今年9月以降に初めて自治体に配る「森林環境譲与税」は、横浜市が約1億4200万円を受け取り、市区町村で最高となる見とおしなのが、同省への取材で分かった。(中略)「森林環境譲与税」の配分基準に人口を入れたのは、消費地である都市部の木材利用を促し、価格下落を防ぐのが狙い。公共施設の木造化などに充てるのを想定する。(埼玉新聞 5.4)
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