「小規模企業白書 2019」第2部 第2章「フリーランス・副業による起業」から

ときがわカンパニー代表の関根です。

2019年4月26日に、中小企業庁の「小規模企業白書 2019」が公表されました。

連休中に、その中の第2部 第2章「フリーランス・副業による起業」に目を通してみました。いくつか印象に残った点を抜きだし、私の考えも書いておきます。

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・男性の起業家が減少する一方、女性の起業家は増加しているため、起業家全体に占める女性起業家の割合は上昇している。

・起業希望者が起業準備に踏み切れない理由。40 歳未満では、男性が「知識・能力に自信がない」が最も多く、女性は「出産・育児のため」が過半を占めている

・起業希望者にとって育児が起業準備を阻害する要因の一つと認識されることが分かった。他方、実際に起業した者の「育児」の状況について見ると、男女ともに非起業家よりも「育児あり」と回答する割合が高い。起業家には、育児と仕事を両立している者も少なくない割合で存在している。
・これは、非起業家に比べて働く場所や時間などを比較的自分でコントロールしやすい立場にあることも一つの理由になっていると推察される。

・我が国の起業無関心者の割合は一貫して高水準で推移しており、起業意識が相対的に低い。
・起業無関心者に占める起業活動者の割合が極めて低いことは各国共通であることが確認されるため、起業活動者を増やすには起業関心者を増やすことが重要であることも分かる。

・我が国では、起業するために必要な能力などが備わっていると自分自身で認識しているかどうかが、起業に踏み切れるかの大きな要素になっていると考えられる。
・我が国においては自身の能力などで起業ができるかどうか見極める機会を増やすことが、起業家を増やすための有効な支援策になり得るといえよう。

・(オランダで起業活動が活発な理由の一つとして)国際競争の激化やリーマン・ショックの影響などにより、オランダの国内企業の雇用創出力が低下する中、自己雇用である起業が重要な選択肢の一つになったことが挙げられる。

・フリーランス起業家は、起業前に比べて収入に関して「満足」、「やや満足」と回答する起業家の割合は減少している。
仕事の自由度・裁量に関する満足度の推移について示したものである。いずれの類型も起業前に比べて、「満足」及び「やや満足」と回答する起業家の割合は増加しており、特にフリーランス起業家の満足度の変化が顕著といえる。

・女性の方が男性に比べて、開業費用が低いという傾向が見て取れる。

・起業の目的を類型別に確認する(第 2-2-34 図)。いずれの起業家についても、「自分の裁量で自由に仕事をするため」が上位回答となっている。

・事業を拡大することを志向する起業家にとっては、企業経営に関する専門知識の不足が課題と認識しているものと推察される

・個人年収 200 万円未満の層は、他と比べて取引先数が1者以下と回答する者が多く、また、年収が高くなるにつれて取引先数が多くなる傾向にあることが分かる。
・個人年収が高いフリーランス起業家の方が、従業員規模の大きい取引先を有している傾向にある。

(↑ ちなみに、こういう調査で出てくる「年収」は、「年商(年間売上)」と考えてもよいと思います。実際、起業初期の段階においては、自分の給料(年収)を払える売上まではいかず、年間売上(年商)=自分の収入ぐらいの感覚のミニ起業家が多いと思います。年商 数千万円いくようになって初めて、自分の給料(役員報酬)を出して、年収 数百万円~1千万円いくのが、実際だと思います。仮に、私が起業初期に、こういう調査に協力したとしたら「あなたの年収はいくらですか?」という問いに対しては、年間売上(年商)で答えると思います。)

・実際にフリーランスを活用した実績がある者は、家族や親族、知人・友人などの身近な人がフリーランスであるケースが多い。

(↑ これについては、事業開始10年以内の「起業家」が回答者だそうなので、もし可能であれば、今後は事業開始10年以上の「中小・中堅企業」の経営者や、「大企業」の担当者からのデータがあったらありがたいです。彼らが「フリーランス」を活用する理由が分かると、フリーランス起業家にとっては大きな参考になるので。)

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以上の調査結果を参考に、私の考えを「自由度」「収入」「自信」の3点から述べます。

1.自由度

やっぱり起業の魅力は「自由度」なんですね。仕事内容、仕事相手、働く場所、働く時間を、自らの裁量で決められるというのが、起業への動機づけ(起業目的)でも上位であり、実際に起業しての満足度でも高くなっています。

女性起業家が増加しているのも、起業による自由度の高さが、育児との両立を可能にしているからかもしれません。

2.収入

実際に起業しての収入に関しては、以前に比べて満足度も低いようなので、それほど稼げていないフリーランス起業家がいるのも事実でしょう。その分「自由度」が増したことが、「起業して良かった」と思える高い満足度につながっているのかと思います。

収入に関しては「顧客の創造と維持」が出来ているかどうかが分かれ目になっています。年収200万円未満の場合、顧客が1者のみ、年収が高くなるほど、取引先数が増えています。しかも、従業員数が多い取引先を持っている起業家のほうが、年収が高くなっています。(これは「小規模企業白書 2016」でも同じような傾向が示されています。)

ミニ起業家が収入を増やしたいなら、取引先数(顧客数)を増やすこと、そして、従業員規模が大きい「中堅・大手企業」との取引が必要になってくるということです。

これは、私達が重視している「起業=複数顧客の創造」と「b2B(ミニ起業家が、大企業と取引する)」にも繋がってきます。

3.自信

起業できない理由が「知識・能力に自信がない」ことであり、起業に踏み切れるかどうかが、その自信を持てることだとしたら、やはり「経験機会」「精神・内省支援」「人脈構築」が必要になるでしょう。

収入をあげるためには「複数顧客の創造」が必要になる。では、自分が本当に顧客を創れるのか、「集客し、実際に商品、サービスにお金を払って頂き、満足して次も購入して頂ける」そういう「顧客の創造」を試せる「経験機会」を作っていくことが必要になるのです。

かつ、周囲には「起業無関心者」が多いため、「やめた方がいい」「上手くいかないよ」と、各種「呪い」の言葉をかけられやすい環境となります。そのような中で、ミニ起業家は「不安」にさいなまされ、当初抱いた「自信」が消えかける恐れも出てくるのです。

だからこそ、先輩起業家や同じ時期に起業した起業仲間による「精神支援」や、自身の活動内容をふり返り、次につなげる「内省支援」が必要になるのです。そしてそれらの励ましあいを通じて、起業家が共に歩むべき「人脈」も構築されていくのです。

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ということで、我田引水になりますが、ときがわ町起業支援施設(ioffice)で行っているミニ起業家(フリーランス起業家)支援は、やっぱり間違っていないと確信が持てた今回の小規模企業白書のデータでした。

参考:
1)ときがわ町起業支援施設(ioffice)が「やっていること
2)ときがわ町起業支援施設(ioffice)が「やらないこと

投稿者プロフィール

関根 雅泰

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